国道16号線−典型的な日本の郊外として知られるこの道路の沿線は、80年代後半から、社会を震撼させる事件が頻発し続ける、犯罪多発地域でもある。その理由は何か、国道16号とはどのような道路なのか。ネット心中や若者のメンタリティを数多く取材するルポライターが、豊富なフィールドワークで沿線住民の心象風景や消費行動をもとに、その実態を明らかにする。
1本の道路から、日本社会が抱える闇が見えてくる−−。
(配信 情報センター出版局)
「出会い系」殺人もR16からはじまった

◯多様化する「出会い系サイト殺人」

 このほか、「出会い系サイト殺人」は、多様性を見せて行く。単なる男女のもつれあいから、最近では一方的に性的な願望を満たす方法としての殺人にまで至る。
 05年8月、愛知県岡崎市の市職員の男(27)が、同県豊明市の山林内に、無職少女(17)の遺体を捨てたとして、死体遺棄容疑で逮捕。その後、殺人を認めた。
 調べによると、2人は事件発生の数日前、携帯電話の出会い系サイトで知り合った。8万円で援助交際をする約束で会うことになったが、男は、
 「会った際に4万円を渡したが、残りの支払いをめぐって揉めた」
 「交際を『会社にいう』と少女に脅されて、怖くなって殺した」
 などと話していた。しかし、その後、男が「死体マニア」に関するサイトの管理人だったことがわかり、
 「初めから殺害目的で呼び出した」
 ということが明らかになった。事件発生後、少女の携帯電話から友人あてに「助けて」とメールを送っていたが、それは偽装工作だということも明らかになる。もともと殺害を目的に出会うという意味で「出会い系サイト」を利用した初めての事件だった。

 また、「自殺系サイト」ではあったが、本人の性的な欲望を一方的に満たすための事件という意味では、05年8月に発生した「自殺系サイト連続殺人事件」も、類似の事件だ。
 元派遣社員の男(37)は「窒息プレイ」の嗜好者で、それまでにも類似の事件を起していて、服役もしたことがある。しかし、どうしても性的嗜好がおさえられない。そんなとき、ネットカフェにいくと、偶然、「自殺系サイト」をみつけた。
 「相手の苦しむ顔が見たかった」
 と男は供述しているが、本人の性的嗜好を一方的に満たすために、自殺願望者を選び、本人にとって都合の良い「出会い系サイト」化させていく。そして、「ネット心中」の呼びかけをよそおって、三人の男女を殺害した。

◯出会い系サイト関連事件の現状

 警察庁は、2000年以降の「出会い系サイト関連事件」の統計を発表している。それによると、検挙数は2000年、104件。2001年、888件。2002年、1731件。2003年、1743件。2004年、1582件。2005年、1581件と、03年がピークとなっている。
 事件種別では、「児童買春・児童ポルノ処罰法違反」では、00年、41件。01年、387件。02年、813件。03年、810件。04年、768件。05年、707件で、02年がピークだ。
 「青少年保護条例違反」は、00年、20件。01年、221件。02年、435件。03年、448件。04年、377件で、03年がピークとなっている。
 殺人や強盗、強姦、放火などの「重要犯罪」は、00年、15件。01年、73件。02年、100件。03年、137件、04年、95件で、03年がピーク。殺人にかぎると、00年、1件。01年、6件、02年、6件、03年、4件。04年、2件。05年、2件と、02、03年がピークだった。
 06年上半期のデータも発表になっている。総数は710件で、前年同期と比べて、199件、28ポイント増加している。増えた最も大きい要因は、「児童買春」で、66件の増加で365件。次いで、「青少年保護育成条例違反」が50件増の260件、「児童ポルノ」が33件増の54件となっている。
 これらの数字を見ると、いかにも「出会い系サイト」に関連した事件が多発しているかのようだ。しかも、06年になって増加に転じようとしている状況は、「出会い系サイト」=危険、と印象づける。
 しかし、こうしたデータは、あくまで「検挙」であり、「出会い系サイトに関連があった」と警察庁に報告があったものだ。警察の捜査の仕方によって、恣意的なものになる可能性は否定できない。
 ただし、数の増減は別としても、そうした事件が頻繁に起きていることは否定できない。それらの事件の元祖となったのが先の事件であり、そして、全国へ波及し、ネットに通じた「殺人」が標準化されてきた。 
 R16での新興住宅地化による匿名の街への「進化」。それは、ニュータウン化などで人口流動が激しくなればなるほど、匿名化していく。その流れの中で、快適さと裏腹に孤独感も一緒に襲いかかる。その孤独感をベースにし、匿名の人たちをつなげたもののひとつが「出会い系サイト」だった。
 R16的な人たちにとって「出会い系サイト」は孤独感を癒すものとして利用される。そして恋愛や結婚といった「正」の部分もみられるが、殺人事件などの「負」の部分も一緒に連れて来たのだ。

 参考文献
 渋井哲也 「出会い系サイトと若者たち」(洋泉社新書)
 渋井哲也 「[ケータイ・ネット]を駆使する子ども、不安な大人」(長崎出版)
 渋井哲也 「ウェブ恋愛」(ちくま新書)
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by webmag-a | 2006-09-25 06:00 | 「出会い系」殺人-4