国道16号線−典型的な日本の郊外として知られるこの道路の沿線は、80年代後半から、社会を震撼させる事件が頻発し続ける、犯罪多発地域でもある。その理由は何か、国道16号とはどのような道路なのか。ネット心中や若者のメンタリティを数多く取材するルポライターが、豊富なフィールドワークで沿線住民の心象風景や消費行動をもとに、その実態を明らかにする。
1本の道路から、日本社会が抱える闇が見えてくる−−。
(配信 情報センター出版局)
カテゴリ:「出会い系」殺人-3( 1 )
「出会い系」殺人もR16から始まった
◯ネット恋愛の全国的波及

 ネット恋愛のもつれによる殺人事件はR16以外にも波及した。01年4月、茨城県牛久市の主婦B(享年28)を、北海道木古内町の無職少年(19)が殺害した。
 00年夏、2人は携帯電話の「出会い系サイト」のチャットで知り合い、北海道と茨城県の遠距離恋愛がスタート。そのメールのやりとりのなかで、「独身OL」「母親や弟と一緒に住んでいる」としていた主婦Bは少年と会う前に、恋愛感情が芽生え、写真を添えて、ラブレターを送るほどだった。
 ネット恋愛には、1)出会う前に好きになる、2)出会ってから好きになる、3)ずっと出会わない・・・などのパターンがあるが、主婦Bは1)のパターンで、熱烈だったことが予想される。そうした恋愛感情を抱くのは、私のこれまでの「ネット恋愛」の取材でも、特に珍しいことではない。しかも、実際に結婚する例もある。
 00年11月、主婦Bは少年と青森県盛岡市内で待ち合わせをし、初めて顔を合わせた。その後も、2度、函館市内で2人は会い、性交渉を持った。
 ただ、2回目に会っている最中に、主婦Bの夫から少年に電話がきて、「独身OL」ではなく、既婚者で子どもがいることがわかってしまう。
 「夫がいるといったら、あなたに相手にしてもらえないと思ったので嘘をついた。夫のことは好きではないし、離婚の話も出ている。家族のことよりも、あなたのほうが大事だし好き」
 主婦Bは、そう訴え、少年もその言葉を信じた。その後も、主婦Bの恋愛感情は冷めず、こう言ったのだ。
 「離婚届を出した。もう少しして落ち着いたらそっちに行くから、部屋を借りて一緒に住もう」
 少年はこの言葉に舞い上がった。その後、暴力から逃れるためとして、少年の実家を訪ね、夫との離婚を前提にした同棲を認めさせている(しかし、実際には、主婦Bは夫に説得され、離婚していなかった)。
 こうした流れから一般的に考えられるは、離婚成立、そして主婦Bと少年の結婚を前提とした同棲生活のスタートだろう。主婦Bがそこまでするほど少年を好きだったという事実は、少年の気持ちをも強く動かした。
 一方、少年の母親は主婦Bに不信感を抱き、別れるように言う。しかし、どうしても少年は主婦Bを忘れることができなかった。
 「母親と一緒にいては、カノジョと会うことができない」
 そう思った少年は家出を決意。茨城県内で主婦Bと会うことができた。主婦Bは、
 「離れていてもあなたのことは忘れなかった。夫とは離婚したが、親から言われて一緒に住んでいる。家を出たいけどお金もないし、住むところもない。お金が貯まったら一緒に暮らそう。でも、あなたの母親は嫌いだし、こちらの友達とも別れたくない」
 といい、少年は、
 「専門学校を辞める手続きをして、また来るから、こっちで一緒に暮らそう。親に反対されても出てくるから」
 と応え、いったん、北海道の自宅へ戻った。しかし、その後、主婦Bのじらす言葉が多くなって、少年がいらだつ。
 「今日は家を出られない。子どもの保育園を変えたいが、お金がない。保険を解約してお金をつくって、家を出ようと思ってる」
 との言葉にさらに疑問がわいてくる。そうしているうちに、母親から、
 「騙されているのではないか」
 と電話でいわれている。そんな中で、少年は親の反対を押し切って来て、しかも、知人の居ない地域では将来の見通しもたたない状況だった。そのため、少年は主婦Bの気持ちを確かめ、本気でなさそうであれば、主婦Bを刺して、自分も死のうと決意し、犯行に及んだのだ。
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by webmag-a | 2006-09-25 06:00 | 「出会い系」殺人-3