○ 殺意をかりたてたもの
広宣はかつてより、車を盗難しては乗り回していた。当時セルシオを乗っていたが、やはり盗難車であった。執行猶予中の広宣にとってはリスクがあった。そのために、新たな車が欲しかったのだ。
しかし、それまでにクレジットカードの借金は600〜700万円ほどになっていた。そこで、新たに借金をするために、「婚姻」をし、新たな「姓」になることを考えて、Eに提案。Eは拒否したため、裕子に話をふった。裕子は報酬金10万円という約束で快諾した。
しかし、車のローンも、クレジットカードの借金を返済できないでいた。報酬金も10万円のはずが、実際は7万円だけだったという。そんな中で生活は苦しくなる一方で、覚せい剤を購入する。さらに、Eとの間に子どもができるなど、問題が山積みになっていく。そんなときだった。
「籍を抜きたい」
裕子がそう言ってきたのだ。裕子の妹が携帯電話を買うことになり、住民票をとる必要性がでてきたのだ。偽装結婚がバレてしまうと裕子は思ったのだ(実際には離婚しても、婚姻関係にあったことは書類上は分かってしまうだろうが)。
「だったら、7万円返せよ」
広宣はそう主張し、二人の関係は泥沼に入っていき、もはや、誰にも止められない方向へと進んで行く。
「被告人は、被害者が警察に通報すれば、執行猶予が取り消され、服役しなければならなくなるかもしれないと危惧し、同月中旬ないし同月下旬(注、「同月」は9月のこと)、口封じのために被害者を殺害しようと決意した」(判決文より)
事件当日、裕子さんが「ピュアローズ」を出たのが閉店後の午前2時20分ごろ。裕子と店のママが、迎えにした広宣のマーク2に乗り込んだ。ママを近くの自宅前で降ろして、二人きりになった。
同じ頃、共犯者の4人は日産セドリックに同乗し、R16のエアポケットである貝塚墓地に向かい、待ち伏せしていた。
貝塚墓地に2人が着くと、裕子さんにトランクをあけさせ、そのスキに、背後から4人に襲わせたのだ。そこで、裕子さんの命は途絶えることになった。
被害者が働いていたプチキャバ。至近には小学校がある。