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国道16号線−典型的な日本の郊外として知られるこの道路の沿線は、80年代後半から、社会を震撼させる事件が頻発し続ける、犯罪多発地域でもある。その理由は何か、国道16号とはどのような道路なのか。ネット心中や若者のメンタリティを数多く取材するルポライターが、豊富なフィールドワークで沿線住民の心象風景や消費行動をもとに、その実態を明らかにする。
1本の道路から、日本社会が抱える闇が見えてくる−−。
(配信 情報センター出版局)
千葉市・幼妻殺人事件-1
○犯行現場はR16のエアポケット

 16歳の少女が焼死体で発見されたのは2003年10月1日午前7時ごろだった。場所は千葉市若葉区貝塚町の貝塚墓地の駐車場で、ジョギング中の男性が発見した。

 その場所でジョギング中の男性に発見されたのが16歳の少女で、千葉市若葉区千城台東に住む、飲食店勤務の石橋裕子だった。マネキンのようで、ボクサーのファイティングポーズような格好をして、仰向けの状態だった、という。

 司法解剖の結果、裕子は複数の人間に暴行を受けたこと、頭蓋骨には10カ所近く骨折、顔にも陥没があったことなどがわかってきた。直接の死因は、頭部打撲の脳挫傷。凶器は遺体近くにあった70キロ近くある墓石用の石材。呼吸停止後に燃料をかけられ、燃やされたこともわかった。

 主犯は、戸籍上の夫だった石橋広宣(当時22)。そして、高校3年生を含む10代の少年4人。広宣は消費者金融からの借金を重ねており、さらなる借金をするため、婚姻届を出して、「姓」を変える偽装結婚をしていた。その偽装結婚を明るみにしようとした裕子を殺害しようと計画。確実性を高めるために共犯となる少年4人を巻き込んでいった。

 そして、貝塚墓地に呼び出した裕子の衣類を掴んで引き倒して、何度も足蹴りを繰り返した。そして、広宣らが持っていた金槌で数回、頭や背中を殴打するなどして、裕子を殺害した。そして、遺体にライター用のオイルをかけて、燃やしたのだ。

 遺体発見現場となった貝塚墓地は、国道16号から国道51号に左折し、さらにすぐ左折した小高い丘にある。その入り口は住宅地になっており、進んで行くと、小さな公園があり、墓地がいくつか見えてくる。発見場所は最も奥の墓地に隣接する駐車場だった。「R16」の場所でありながら、死角となっている。
 私は以前、取材でこの場所に一度行ったことがあった。そのときの取材では場所を特定して向かったため、この場所は地元の人も十分知っているのだろうと思い込んでいた。今回の取材で、もう一度訪れたときには、タクシーに乗り、運転手に「貝塚墓地」を指定したが、運転手はその墓地の場所を知らなかった。

 「貝塚墓地? あ、あの墓地ですか。事件が起きたときには、貝塚墓地ってどこだ? とタクシー運転手仲間でも話題になったんです。貝塚町は市民霊園などの墓地がたくさんあるので、どこなんだろうと」(タクシー運転手の男性)

 たしかに、若葉区貝塚町の地図を見ると、墓地がいくつかある。しかし、「貝塚墓地」の名前は見つからない。隣接する桜木町の交番で警察官に聞いても、なかなか見つからないでいた。住宅地図を広げてみていると、やっと見つけることができたぐらいだ。当時勤務していた人とは違うだろうが、警察官でさえ事件が起きた現場を知らず、日頃は巡回しない場所なのだろう。貝塚墓地はR16沿いのエアポケットで、大人の目から逃れるには最適な場所だ。

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事件の現場となった貝塚墓地。人通りは少なく、地元でもその存在を知る人は少ない。
# by webmag-a | 2007-02-15 22:52 | 千葉市・幼妻殺人事件-1